北九州のムカシトンボ産地

3月の平均気温は日本の大部分の地点で、気象庁100年の観測記録で最高だそうです。今年は春のトンボがやたら早いのですが、納得です。

さて、ムカシトンボは近場の渓流でも見られるのですが数は極めて少ないため、北九州の多産地の状況はどうだろうと、お出かけしてきました。昨年4月28日に来た時は惨敗で、♂を2回見たのみでした。こういう場所です。

ムカシトンボ
北九州のムカシトンボの場所

11:00頃から2時間半程度滞在しましたが、昔のようにムカシトンボがひっきりなしに訪れる光景は見られないものの、近場ポイントよりは大部ましでした。

ムカシトンボ
ムカシトンボ♂

最初翅をブルブルさせながら産卵していた♀が、産卵集中モードに入って翅も動かさなくなったので、試しにツンツンしてみるとポロリと落下してしまいました。その後、飛び立つまでかなり時間がかかったので、やはり♀は産卵時間が長くなると、すぐには飛べなくなってしまうようです。

ムカシトンボ
飛べるまでに時間がかかったムカシトンボ♀

あと、普段は現場で人と会うことはなくコロナも関係ないのですが、今日はこのポイントを発見されたNiさんと、お目にかかるのは初めてですがNoさんもいらっしゃいました。情報交換させていただきました。

クマモエゾトンボのヤゴ

二本立てのふたつ目は、クマモエゾトンボです。

今回、「北海道のトンボ図鑑」の著者のおひとりで、また「北海道トンボ研究会報」の編集などもされている横山透氏から、飼育されているクマモエゾトンボの一部を分けていただきました。

エゾトンボ科のトンボは九州でも、タカネトンボとトラフトンボはそこそこいて、エゾトンボとハネビロエゾトンボは局地的にはいますが、エゾトンボといえばなんといっても本場は北海道です。日本にいるエゾトンボ科13種のうち、9種類が北海道に生息しています。なかでも、クマモエゾトンボは高山の高層湿原の池塘(湿原の泥炭層にできる池沼)を住みかとする珍しいトンボです。
今後、クマモエゾトンボの飼育をトライしようと思いますが、北海道のしかも高地に生息するヤゴですので、高温対策がどうしても必要です。下図のように、飼育容器に水をはり、熱帯魚用の空冷ファンを設置してみることにしました。気化熱でかなり温度は下げられるはずです。

クマモエゾトンボ
クマモエゾトンボの飼育環境

ヤゴは肉食性で、飼育の際に一番問題になるのは共食いですが、クマモエゾトンボはほとんど共食しないとのことですので、右の大きめの容器にまとめて入れてあります。私の経験でも、トラフトンボはいっしょに飼育してもほとんど共食いはありませんでしたし、エゾトンボもあまり共食いしませんでした。もしかしたら、エゾトンボ科全般にそういう傾向があるのかもしれません。
下の写真は上が5齢で、下が7齢です。5齢では翅芽がまだほぼ見えていませんが、7齢ではかなりはっきりしています。

クマモエゾトンボ
クマモエゾトンボの5齢幼虫
クマモエゾトンボ
クマモエゾトンボの7齢幼虫

さらに、同じエゾトンボ科のカラカネトンボと、トンボ科のカオジロトンボのヤゴも送っていただきました。上がカラカネトンボヤゴで下がカオジロトンボヤゴです。

カラカネトンボ
カラカネトンボのヤゴ

カオジロトンボ
カオジロトンボのヤゴ

先に掲載した飼育環境の小さい容器の方に、カラカネトンボヤゴとカオジロトンボヤゴが入っています。トンボ科の、カオジロトンボは共食いする可能性が高いと思われ個別隔離してます。

横山様、今回は貴重なヤゴをお分けいただき、誠にありがとうございました。

早すぎるシリーズ。ダビドサナエの産卵。

今日は二本立てです。

まず、一つ目は早すぎるシリーズでダビドサナエの産卵。
行ったのは4月3日と同じ場所で、市街地にそこそこ近い我が家から20分で気楽に来られるいかにも福岡らしいポイントです。”いかにも”というのは、よく転勤属の方が、”福岡は都会と自然が近くでいいですね”と、言ってくれるから。

少し渓流が開けて流れが緩やかになった場所で、ダビドサナエ♂2が縄張りを張っていたので、産卵が来るかもと見張ることにしました。♂が数分後に場所を少し移動したとほぼ同時に♀が現れ産卵を始めました。

ダビドサナエ
ダビドサナエ♀の産卵

例年だとここで産卵が見られるのは4月下旬からですので、早すぎるシリーズに決定です。それにしても、♂は2mくらいしか離れてないのに、全く別の方向を見ていて♀に全く気づいていません。

例年ムカシトンボの産卵痕がよく見られる場所に移動すると、今日も♀が産卵していました。♀は産卵に夢中になると、全くヒトを気にしなくなるので、olympus tg-5顕微鏡モードで数cm手前から撮影。

ムカシトンボ
ムカシトンボ♀の産卵

さらに、つついても♀は全く気にする様子がないので少し場所を移動してもらい、いわゆるやらせ撮影と、もうやりたい放題です。

ムカシトンボ
やらせ撮影で撮った斜め方向からのムカシトンボ♀

かなり羽をブルブル振るわせた後に飛んで行きましたので、もしかしたら渓流で気温が低いため、ある程度産卵が長引くと体が冷え、すぐには飛べない状態になるのかもしれないです。
例年ここのポイントでは必ず産卵痕を見るのですが、今年の人気スポットはこの岩で、産卵痕がかなり見られます。あるいは、先ほどの♀のお気に入りの場所かもしれません。

ムカシトンボ
ムカシトンボの産卵痕が集中していた岩

ムカシトンボ
ムカシトンボの産卵痕

3月27日に確認したヒメクロサナエの羽化が2週間後の今日もまだ続いていました。こちらの♂も、まだ飛ばないのをいいことに顕微鏡モードでの撮影です。

ヒメクロサナエ
ヒメクロサナエ羽化直後の♂

早すぎるシリーズ。ギンヤンマ。

今日も早すぎるシリーズです。
行ったのは3月26日と同じ池。オツネントンボの交尾態が撮れたらいいな、と思って葦藪をゴソゴソしていると、想定外のヤンマの交尾態が葦藪から飛び出しました。
少しびっくりです。ギンヤンマでした。

ギンヤンマ
4月7日のギンヤンマ交尾態

成熟期間を考えると、おそらく4月前にはすでに羽化していたのではないでしょうか?フィールドガイド「日本のトンボ」では成虫の出現は4月からになっており、やはり今年の春のトンボは異例に早い気がします。

なお、当初の目的オツネントンボは今日は1頭も見られず、残念。

ムカシトンボの産卵

昨日のムカシトンボの写真がぶれまくってたので、撮り直しに同じ場所へ。
10時半頃まで摂食する♂と♀が2-3頭いましたが、しばらく消えて、12:15になって♂のパトロールが再び現れました。しかし、これはすぐにロスト。
次に現れた個体は、産卵管がちらっと見えて♀でした。どうも、行動を見ていると産卵場所を探していそうです。追跡したところ、何とこの時期に産卵を始めました。

ムカシトンボ
ムカシトンボ♀の産卵

いやー、今年は完全に早すぎる春ですね。
♂のパトロールは1回のみしか認めず、♂の飛翔写真を狙ってきたはずのに、結果的に撮れたのは♀の飛翔写真のみでした。

ムカシトンボ
ムカシトンボ♀

ムカシトンボ♂のパトロール

桜の開花が2週間早かったので、ムカシトンボも早すぎる♂がパトロールしてないかと3月27日と同じ渓流へ。
ちゃんと、パトロールしてました。5回目撃しましたが、写真を撮れたのはピンボケのこの1枚のみ。

ムカシトンボ
ムカシトンボ♂パトロール

さすがに産卵痕は見つけられませんでしたが、例年だとここは4月20日以後くらいから産卵が始まりますので、この調子だと来週あたりにもう産卵があるかもしれないです。

他には羽化して間もないヒメクロサナエが5頭。

ヒメクロサナエ
ヒメクロサナエ♀羽化直後

アサヒナカワトンボ♂1頭。

アサヒナカワトンボ
アサヒナカワトンボ♂

あと、ダビドサナエ♂も1頭いました。体色もしっかりしていて、そろそろ縄張りを張りだすのでは?

ダビドサナエ
ダビドサナエ♂

それにしても、ここは山間の渓流で4月になったばかりだというのに、ウロウロしていると汗がふき出します。
今年は、トンボも桜と同様に2週間は早いようです。

クロサナエ飼育ヤゴの羽化

深度合成撮影用に飼育していたクロサナエヤゴが、不覚にも撮影前に羽化してしまいました。仕方がないので、再採集のため2017年7月1日のヒメサナエと同じ渓流へ。
ダビドサナエとクロサナエヤゴはそっくりですが、♂に関しては肛上片の突起の形態で区別がつきます。
ダビドサナエ系が30頭以上はいて、そのうち♂が10頭程度でクロサナエは3頭いました。もしかして羽化したトンボもいるかもと期待しましたが、少し高度が高い場所でクロサナエヤゴを飼育していたベランダより気温が低くて発生が遅れるため、トンボはまだ何もいませんでした。平地で3月27日に確認したヒメクロサナエ成虫も、翅芽が膨らんだヤゴを7-8頭見たのみで、羽化まではもう少しという感じでした。
1頭を採集して深度合成撮影。

クロサナエ
クロサナエの羽化直前終齢ヤゴ

通常の撮影だと複眼に焦点が合ってると尾端はぼやけてしまいますが、両方ともはっきり写っています。ダビドサナエの♂では肛上片の突起は半球状に少し盛り上がる程度です。
なお、終齢ヤゴの羽化へ向かっての形態変化については、奥出絃太氏が今年論文を発表しています。
https://www.nature.com/articles/s41598-021-84639-2
49種158個体のヤゴについて、終齢の形態変化を毎日撮影(6000枚以上)・解析し、その変化を分かりやすい指標で3ステージに分類できるという内容です。

飼育していたクロサナエヤゴも、ステージ3になったらそろそろ羽化と分かってはいたのですが、時期的にまだだよねー、と油断していたら羽化されてしまいました。気づいたらエアレーションしていたチューブに器用に這い上って羽化もきっちり成功していました。

タイリクアキアカネ卵から羽化したトンボ

昨年10月25日にタイリクアキアカネ♀から採集した卵が孵化して、複数のヤゴを飼育中でしたが、本日になり最初の個体が羽化しました。
残念ながら羽化した♀は、アキアカネに近い特徴を持つトンボでした。
(なお、両者の鑑別は昨年10月24日に記載)

アキアカネ
タイリクアキアカネとアキアカネのハイブリッドと思われる♀

アキアカネ
タイリクアキアカネとアキアカネのハイブリッドと思われる♀

アキアカネ
タイリクアキアカネとアキアカネのハイブリッドと思われる♀の尾端

つかまえたタイリクアキアカネ♀が最後に交尾したのは、アキアカネ♂だったようです。
純粋なタイリクアキアカネ同士のペアからの採卵は、またまた今年の秋に持ち越しです。

ヒメクロサナエ出現

昨年4月25日と同じ、近場の渓流へ。
油断して水筒と帽子を持っていくのを忘れていましたが、今日はすでに両方とも必要な陽気になっていました。
渓流にはヒメクロサナエが出現していました。手元にある「大分県のトンボ」によると、大分県でのヒメクロサナエの初見日は4月18日ですので、かなり早い出現だと思います。
ヒメクロサナエ♀4頭と♂2頭がいました。今日羽化したと思われる個体ばかりでしたが、この♂は昨日以前に羽化した個体かもしれないです。

ヒメクロサナエ
ヒメクロサナエ♂

他の、羽化したばかりと思われる個体。

ヒメクロサナエ
ヒメクロサナエ羽化直後♀

ヒメクロサナエ
ヒメクロサナエ羽化直後♂

あと、上空には摂食中の♂体型のトンボも1頭いて、時期的にはムカシトンボだと思いますが、確認はできませんでした。

トンボ開幕。オツネントンボ。

そろそろ、トンボ成虫シーズンが始まったので、昨年4月6日と同じ池へ。福岡では、あまりいないオツネントンボを今年も見つけることができました。

オツネントンボ
オツネントンボ♂

日本には成虫で冬を越すトンボが3種いますが、そのひとつです。枯れ草色の体色がしぶくて、お気に入りのトンボ。
池全体を結構さがしましたが、今日は♂2頭しか見つかりませんでした。もうしばらくしたら、交尾や産卵も始まると思いますので、また来てみることにしよう。

yagopedia blog版(ヤゴペディアブログ)