ミヤマサナエの過剰終齢ヤゴ

現在終齢ヤゴの立体画像を少しずつ深度合成画像で置き換えているのですが、その目的で採取していたミヤマサナエヤゴで想定外の現象が起きました。
終齢のはずのミヤマサナエヤゴがさらに脱皮してしまい、巨大サイズのヤゴになってしまったのです。

下図の上が深度合成で撮影した今回のミヤマサナエ終齢ヤゴで令和1年5月12日に撮影したものです。下が従来掲載の終齢ヤゴ。なお、終齢は専門書ではF-0、亜終齢はF-1(終齢マイナス1)と表現します。

ミヤマサナエ
(上)今回のミヤマサナエ終齢ヤゴ5月12日、(下)従来掲載ヤゴ終齢

翅芽の発達具合などから今回採取したヤゴは終齢です。なお立体撮影しかしておらず体長測定はなく、大きさは従来ヤゴに適当に合わせています。

下図は従来掲載ヤゴのF-1(左)、F-0(右)画像。だいたいどのトンボでも腹長に対する翅芽長の比率は似たような感じです。

ミヤマサナエ
(左)ミヤマサエ亜終齢、(右)終齢

6月26日になってミヤマサナエ飼育水槽の中で脱皮殻を見つけました。あれっ?、亜終齢を終齢と勘違いしてた?。画像を再確認しますが間違いなく終齢です。
ということで6月28日に過剰終齢ヤゴ(英語ではoutsizeと表記してあります)の撮影をしてみました。下図の左が従来掲載の終齢ヤゴで、右が今回の過剰終齢ヤゴです。サイズも大きく従来のヤゴの体長が約25mmで今回が約33mm(頭幅は約7mm)。ミヤマサナエの終齢ヤゴは体長26~29mm、頭幅6mm内外といった所です。

ミヤマサナエ
(左)従来終齢ヤゴ、(右)今回の過剰終齢ヤゴ

立体画像です。上が今回のヤゴで下が従来ヤゴ。翅芽の腹節に占める割合も大きくなっています。なお過剰ヤゴになってからは非常にhyperactiveに動き回り、氷冷しても完全に動きを止められず深度合成は出来ませんでした。

ミヤマサナエ
(上)今回の過剰終齢ヤゴ、(下)従来掲載ヤゴ

「トンボ博物学ー行動と生態の多様性」 by フィリップ S. コーベットによると、F-1の段階では色んな要因により脱皮の追加が起こることが知られています。しかし、F-0では観察されていないようです。
また、ヤゴの変態はアラタ体と腹面腺に入力するホルモンで調節されており、実験的に余分なアラタ体を移植されたF-0ヤゴは巨大な過剰F-0ヤゴになったそうです。

最もありそうなのは、このヤゴは変態に関する遺伝子群に何らかの異常を持つヤゴということなのでしょうか?それとも成長ホルモンに問題がある巨大ヤゴで、実は5月12日がF-1で、今回がしっかりF-0とか?
このまま羽化までいって、大型ミヤマサナエ成虫になるのか興味深いところです。

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2019年6月30日追記
この件に関してトンボなどのDNA解析で多くの業績があり、またネイチャーガイド「日本のトンボ」の共著者でもある二橋亮氏にメールで相談させていただきました。
結果として、F-0幼虫の過剰脱皮幼虫の可能性があり、知り得る範囲では報告がない稀な例で、状況により遺伝子解析も試みるかも?とのことです。
二橋亮様、色々とお教えいただき誠にありがとうございました。
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